昔ね、青年向けマンガ雑誌で「ホワッツ マイケル?」というキワモノ(よく言えば個性派?)の作品が人気を得て、一時はなにやら連載されるたびに若者の流行・趣味・嗜好の偏向ぶりが突出される狂想曲の宴に、読者を始めて、マスコミも異様な偏向報道に徹し、各者は躍起となったのです。中でもね、妻殺しの汚名をきた獣医師(笑)が、警察の手を逃れて、逃避行するが医者という職種の運命か、逃亡先でネコが怪我をしていたり、飼い主に虐待されているのを見ると、治癒なり矯正に没頭してしまう。ネコを救い、再び逃亡の旅路に出ると、そこには警察の追っ手が来るのですね。結局、「マイケル」連載中には、この獣医師の運命は未完で終わるのですが、いわゆる「ペットブーム」の先駆者的存在であったマイケルなるネコのキャラクター。個人的にはニャジラというすごくデカくて強い雌ネコが好きですが、まぁ、バブル時には、こういうお馬鹿なマンガに男女問わず夢中になった、それだけの話ですがね。
ハリソン・フォードという役者は、今ではアメリカを代表とする「大御所」に至りましたが、よくよく考えてみれば、この男は「2つの顔」を持つ俳優なのですね。「インディ・ジョーンズ」や「ブレード・ランナー」でのハリソンは、常に「追いかける男」でしたね。悪漢を追い詰め、成敗していく「正義のヒーロー」。ですが、この「逃亡者」では常に追われる側。警察はもちろん、一般市民からも異端視されるが、我が無実を晴らすために逃亡し、それと同時進行系で真犯人を捕まえる「証拠集めに盲目となる」=ダークヒーローという意味合いが強いのです。かなり古い映画で、いわゆるレンタルビデオ全盛期に人気を博した作品ですが、わたしはアナログWOWOWで見た世代です。VHSビデオも買いましたが、所詮、驚くのは最初だけ。2回目からは、まったく面白みのないスリラー映画です。そうですね、スリラーというのがキーワードで、当時流行っていたベトナム後遺症モノの一大スペクタクルなど、なんにも関係のない話なのです。あくまでも、犯罪者と警察の神経消耗戦に重きを置いた「安っぽい活動写真」であるのには、反論の言葉すらありません。
まぁ、見所としては「列車転覆」、「刑務所での銃撃戦」、「ダムからの脱出」・・・この3つしかあり得ない、ずいぶん見栄えのない映画だなあと改めて感じました。これら負の構図からひたすら逃げて、真犯人を追い詰めるストーリーも、今ではそうも面白くなく、よくも悪くも90年代の映画。一時はテレビのロードショーでよくオンエアされていましたが、最近は音沙汰なし。もう、皆は飽いちゃったのではないかな。続編として「追跡者」なる兄弟分が作られましたが、コッチはもっと悲惨な内容になっている。美味しい話は2度続かぬということでしょうね。
監督がアンドリュー・デイビスのせいか、かなり支離滅裂の作りで、ドン・シーゲルとか、ウォルター・ヒルの無骨な作品と比べると、思いっきり見栄えがしない駄作と断言できるでしょう。なんたって代表作が「沈黙の戦艦」とは、コアな映画マニアからは見向きもされない「無能の才人」と評されるのが現実でしょうしね。とにかく、中盤まではそれなりに見れるのですが、ラストがまったくおとなしい映画。真犯人が身内である方程式は、見飽きちゃったなあ・・・。それに、動機が金と名誉だなんて、洒落にもなりません。
トミー・リー・ジョーンズに関しては、珍しく合格点でして、それはそれでいいですよ、でも、変な宇宙人征伐隊とか、ベトナム帰還兵、珍妙なる衣装で失笑を買ったバットマン3作目・・・ここまではまだ許せますが、「わけのわからんコーヒーのCM」とは、いったい何様のつもり?と激憤しましたよ。もちろん、「ブローン・アウェイ 復讐の序曲」のイカレた爆弾魔は評価が(世間でも)高かったですがねぇ、とにかく、この人は「変質的なイカレ者」という役しか来ないのか・・・・こうとも感じます。
それにしても、これだけ「警察の捜査が後手・後手になる映画」も珍しくて、近年の「クリフハンガー」や「ターミネーター」と同じく、「非常事態時には、公安はいかに無力であるか」を痛感するイチモツ。わたしは、やはり正義の裁きが確実に行使されるアクション映画、特に「エグゼクティブ・デシジョン」とかが好きだなあ。もちろん、この「逃亡者」でも、僅かな情報とヤマ勘で真実を突き止める展開があり、不必要なバッシングはしませんが、敵が名誉欲にトボけた初老の爺さんとは、悪の論理に反しているのではないかな。
音楽はすばらしくて、90年代後半からのアクション映画に、少なからず影響を与えたもの、特にハンス・ジマーの一連のスコアに相通じるものがあります。そうですね、この映画はスリラーですので、映像だけでなく音響効果も、一流の策士による演出が貫徹された。ここだけは誉めておきます。今となっては7時からの「衝撃映像!」とかいうバラエティ番組で引用される末路も、否定できませんね・・・。
まぁ、女の色気ゼロで、ここまで商業的に成功したのですから、男性客はもちろん、女性のハートを射止めたハリソン・フォードの男前ぶりに乾杯ですか。わたしは好きではないが、世間がいいとおっしゃるなら、否定も肯定もしません。ハン・ソロ、インディ・ジョーンズに続く新たなヒロイズム像を築いた話題作のひとつであった、その定義は正しいです。総括して5段階評価でEとします。
5段階評価=★ 見た媒体=hulu
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